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認知症ケア

認知症ケアの目標は、個々の尊厳を守り、その方らしい生活を送れるようサポートすることです。

認知症の症状を理解し、その方の日常生活の行動を見守り、言葉に出せないシグナルに気づきどう対応していくかがポイントになります。

認知症の症状を知る1

認知症の症状のうち、脳の機能が失われたことによって直接起こる症状を「中核症状」と言います。

もの忘れがひどくなるといった「記憶障害」、日時や季節、場所、道順などが分からなくなるといった「見当識障害」、新しいことが理解できない、普段と違うことが起こると混乱するといった「理解・判断力の障害」、物事の計画や準備ができない、料理や運転などのミスが増えるといった「実行機能障害」が挙げられます。認知症の診断を受けた方は、これらのうち1つ以上の障害が見られます。

認知症ケアでは、認知症の方が「どんなことができなくなっている可能性があるのか」を理解することが第一歩です。

なお、認知症の原因となる疾患についてはこちらでチェック(しる/はじめての介護/認知症で始まる介護)ができます。

早期に診断・治療を開始することで症状を改善したり、進行を遅らせたりすることができる場合があり、適切なケアを受けることで当人の行動や気持ちが落ちつくこともあります。

認知症の症状を知る2

中核症状に本人の性格や生活歴、周囲の環境、身体状況など様々な要因が加わって起こるのが、行動・心理症状(周辺症状:BPSD)です。例えば、うつ状態、不安、幻覚、妄想、徘徊、暴言・暴力行為などです(※認知症の診断を受けた方、全てに出現するわけではありません)。これらの症状は、本人も自分らしく生活できないつらさにさらされ、周囲も困惑や悩みを抱えます。

周辺症状が起こったとき、ついその症状に気をとられ、直接その行動や気持ちを抑え込むような対応をしてしまいがちです。


徘徊する 家から出られないように鍵をかける。
妄想がある 適当にごまかし忘れさせようとする。

もちろん危険が伴うような緊急性の場合は、その場での対応が必要です。しかしこういった周辺症状には、必ず症状を引き起こす原因・きっかけがあります。これが解消されないかぎり、同様な症状が出つづけます。

認知症ケアで大切なのは、周辺症状を引き起こす原因・きっかけを探し、これらが起こらないよう環境を整え、本人がその人らしく生きられるようにすること。そのためにどんな関わり方をしていくか考えてみましょう。

本人の状態を知る

まず会話がどの程度できるか、話の内容が理解できているか、そして本人がどの程度話したり思いを伝えられるかなどをチェックしましょう。発する言葉数などで、本人の理解力が推測できます。言葉数が減っている人には身振りや手振りなどを交えて、長い文章で話さないようにしましょう。

さらに生活する中で「本人が何ができるか」を知ることが大切です。例えば、掃除機は使えないけれど、ほうきやちりとりを使って掃除をすることができる場合もあります。様々な角度から本人の能力を見てみて、手出ししすぎることなく支えられるようにしたいですね。

心掛けたいこと

認知症の方と関わりあい方に、「驚かさない」「急がせない」「言動を否定しない」「責めない」「自尊心を傷つけない」という5つの「ない」があります。これらの行動は不安や恐れ、焦り、怒り、不信感などを生み出します。無理強いをせず、時間がかかることを理解して対応を。拒否されたらいったんは引いてしばらく様子をみてから、初めから何事も無かったかのように声かけをしてみましょう。

不穏な行動が起こったら

認知症の方に不安感や落ち着きのなさ、多動、イライラ感、興奮や怒り、他人に突っかかるといった、感情が不安定な状態(不穏状態)が見られたときは、まず生活の中に原因がないか探してみましょう。例えば、周りの方のイライラによって、本人の不穏が引き起こされることがあります。

認知症の方はコミュニケーション力が低下しており、身体的な不調や環境への不満をうまく伝えることができません。そのため上記のような表現で周囲に訴えることがあります。周辺症状に繋がるため、本人が何を求めているか原因に気づき、先回りして予防できるようにしましょう。

【原因の例】
理的な要素…不安、寂しさ、怒りなど(このうち不安は最も重要な要素)
■ 身体の不調…便秘、脱水、空腹、運動不足、発熱、痛み、かゆみ、慢性疾患の悪化、睡眠不足
■ 周囲の働きかけの問題…いきなり手や肩をつかんだ、大声で呼びかけた、行く手を遮った 真面目な顔で強い口調で話す など
■ 薬の影響
■ 周辺環境…騒々しい、まぶしい、暗い、狭い・広い、暑い・寒い、臭いがする、なじみがない
■ 以前の習慣…毎朝会社に行っていた、農家で畑を耕していたなど、
■ 急な人間関係や環境の変化…施設への入所や引っ越し、家族や利用者との関係悪化、季節の変化など

原因・きっかけを探すために

原因やきっかけが分かれば、それが起こらないよう働きかけることができます。日々、その方のことをよく観察をしておきましょう。

例えば、「今日はあまり食事が十分に取れていないな」、「だるそうだな」、「汗をかいているけれど、水分が十分取れていないかも」など、日頃接する中で、いつもと状態に気づくことが多いと思います。いつもと違う状態が見受けられたら、すぐに環境を整えるようにしましょう。

【観察すべきポイント例】
■ 体調…体温、食事量、水分摂取量、睡眠、トイレに行った回数(排泄状況等)、口内炎や入れ歯の不具合など口の中のトラブルがないか など
■ 行動…薬が正しく飲めているか、処方薬に変化があったか、一日の中で気持ちや行動が落ち着かない時間帯があるか、その方が苦手や不安に感じる物事はなにか など

このほか、本人のこと、特にバックボーンを知ることも大切です。
例えば、その方がどんな仕事や生活をしてきたかを知ることで、本人に心地よい環境を適切に整えることができます。さらにどんな時代を生きてきたかを知っておくと、会話の糸口もなります。

また、その方が理解できる言葉を探すのも一つの手です。例えば、「便所」という言葉は理解できても「トイレ」という言葉が理解できないなど、同じものを指していても、相手に伝わっていないためにトラブルが起こることもあります。普段の会話の中で、その人が使う言葉も気にかけておきましょう。

注意しておきたいことは、自分を基準に考えないこと。たかだか10~20年でも生活様式に変化が起こっています。相手をよく知ることが解決の第一歩です。

日常生活で気をつけたいこと

認知症の方には、今いる場所が落ち着けて安心できる場所であること、自分の居場所であることを実感してもらえることが大切です。周りの環境をできるだけ変えないようにすると、混乱が少なくて済みます。

加えて昼間は活動し、夜は眠るといった規則正しい生活のリズムをつくりましょう。何か役割を持ってもらうのもいいですね。話しかけるときは正面から話し、ゆっくりと落ち着いた声で。真面目な顔は時として怒っているようにも感じとられることがあり、笑顔で接することを心がけましょう。

そして本人ができることや得意なことは積極的に本人にやってもらいましょう。社会や家庭の中で今も自分が役割を果たせる、必要とされているという感覚は自信に繋がり、自尊心も保たれます。周辺症状も起こしにくいとされています。

認知症ケアは一人で対応できる問題ではありません。他のスタッフやご家族とも連携をとって、何が最善となるか一緒に検討しましょう。

 

参照/厚生労働省「認知症の人と接するときの心がまえ」、株式会社講談社「完全図解在宅介護 実践・支援ガイド」、メディカルレビュー社 「認知症 知って安心!症状別対応ガイド」