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感染症予防

高齢者施設は利用者だけでなく、介護スタッフや家族、委託業者など多くの人が関わり、感染症・感染源が持ち込まれやすい環境です。また感染症に対する抵抗力が低い高齢者が集団で生活し、施設内で感染が拡がりやすい状況です。感染症対策は日頃からの予防と発生時の感染拡大の抑止が鍵となります。

感染症って何?

感染症は細菌やウイルスなどが様々なかたちで体内に侵入し、増殖して症状を引き起こした病気の一群を指します。例えば、インフルエンザや感染性胃腸炎(ノロウイルス感染症等)はウイルス、腸管出血性大腸菌感染症は細菌によります。

感染はどうして起こる

感染の流れには、①感染源 ②感染経路 ③感受性のある人 があり、この流れが繋がることで感染及び発症します。

①の感染源は原因となる細菌やウイルスを持つ物や人のことで、次のものがあげられます。

a 嘔吐物・排泄物(便・尿など)
b 血液・体液・分泌物(喀痰・膿みなど)
c 使用した器具・器材(注射針、ガーゼなど)
d 上記に触れた手指で取り扱った食品など

②の感染経路は細菌、ウイルスなどが体内に運ばれる経路を指し、主に下記のようになります。

接触感染…手指・食品・器具を介して感染。頻度の高い経路。
飛沫感染…咳、くしゃみ、会話などで感染。飛沫粒子(5μm以上)は1m以内の床に落下し、空中を浮遊し続けることはない。
空気感染…咳、くしゃみなどで飛沫核(5μm以下)となり、空中に浮遊し続け空気の流れで飛散する。
血液媒介感染…ウイルス等、病原体に汚染された血液や体液、分泌物が針刺し事故等により体内に入ることにより感染する。

③感受性のある人とは、感染を受ける可能性がある人を指し、高齢者や子どもなど特に抵抗力の低い人のことをいいます。

感染症対策にはこの①~③のいずれかの段階で対応を取ることが必要です。

感染症対策の3つの基本

感染症対策のポイントは以下の3つです。

① 感染源の排除 ②感染経路の遮断  ③個人の抵抗力の向上

①感染源の排除には、まず感染源に素手では触らないこと。必ず使い捨て手袋を着用して取り扱い、手袋を脱いだ後は、手洗い、手指消毒を行います。

②感染経路を遮断する方法は、感染源を「持ち込まない」「持ち出さない」「拡げない」の3つです。

そのためには手洗い・うがいの励行と環境の清掃が重要です。また、感染源(嘔吐物・排泄物・分泌物・血液・体液など)を扱うときは手袋を着用します。またこれらが飛び散る可能性がある場合に備えて、マスクや予防衣(ガウン)の着用についても検討することが必要です。

③個人の抵抗力を向上させるには、利用者や介護スタッフの健康管理が大切です。規則正しい生活やバランスの取れた食事、予防接種やこまめな手洗い等に励みましょう。

標準予防措置策(スタンダード・プリコーション)

利用者と介護者を守るため、「誰もが何かしらの感染症を持っている可能性がある」という考えを基に、すべての利用者の血液、体液、分泌物、排泄物、障がいのある皮膚、粘膜への接触を最小限にする方法が標準予防措置策です。
具体的な対応方法を下記にまとめました。

対応方法

  • 感染源の可能性があるものに触れる時、または嘔吐物や排泄物等の処理後にドアノブや手すりなどの環境面に触る前

    → 必ず使い捨て手袋を着用する(1ケアごとに手袋を取り替える)。

  • 感染源の可能性があるものに触れた後、または他の患者に接する前

→着用していた使い捨て手袋を外す。液体石けんと流水による手洗い、手指消毒を行う。

  • 痰や咳の多い利用者を介護・処置を行う時、嘔吐物や排泄物が飛び散り目・鼻・口を汚染しそうな時、職員に咳・くしゃみのある時

→使い捨て手袋・マスクなどを着用する。

  • 衣服が汚染されそうな時

予防衣(ガウン)を使用する。汚れた予防衣はすぐに脱ぎ、手洗いをする。

このほか、「環境を汚染させるおそれのある利用者は個室対応とする」といった利用者の配置についても注意が必要です。

感染予防に欠かせない手洗い

手洗いは、「手洗いに始まり手洗いに終わる」といわれるほど重要な感染予防対策で、「1ケア1手洗い」「ケア前後の手洗い」が基本です。手洗いには「液体石けんと流水による手洗い」と「消毒薬による手指消毒」があります。

手洗いのタイミングは、勤務開始及び勤務終了時、ベットメイキングやシーツ交換の前後、食事介助の前後、排泄介助の前後、清潔物を取り扱うとき、感染源となるものに接触した時などです。

手洗いの際の注意点は下記の通りです。

・時計や指輪を外しておく。
・爪を短く切っておく。
・流水で洗う。
・液体石けんを使う(固形石けんはNG)。
・使い捨てのペーパータオルで拭く(布タオルを共同使用しない)。

手洗いの手順

①流水で手首の上までよくぬらした後、石けんをつけ、手のひらを合わせてよくこする。

②手の甲をのばすようにこする。

③指先・爪の間を念入りにこする。

④指の間を十分に洗う。

⑤親指と手のひらをねじり洗いする。

⑥手首を忘れずに洗う。

⑦水道の栓を止める時は、手首か肘で止める。できないときはペーパータオルを使用して止める。

消毒薬による手指消毒の手順

①消毒薬約3mlを手に取り(1)、始めに両手の指先に消毒薬をすりこむ(2)。
(1)

(2)

②続いて手のひら(3)、手の甲(4)、指の間(5)にすりこむ。
(3)

(4)
(5)

③親指はねじるようにすりこむ。

④手首も忘れずすりこむ。

※乾燥するまでよくすりこむ。

排泄介助(おむつ交換を含む)のポイント

便には多くの細菌が含まれているので、介護スタッフが病原体の媒介者になるのを避けるためにも、注意が必要です。

■手袋や予防衣(ガウン)を着用し、手袋は必ず一人のおむつ交換ごとに交換する。手袋を外した場合は手洗い、手指消毒を行う。

■おむつ交換車は感染拡大のリスクが高いため、使用を避ける。

嘔吐物の処理の仕方

処理をする際は、処理をする人自身への感染と施設内への汚染拡大を避けるよう十分な配慮が必要です。また迅速かつ確実に行うことが求められます。

 

準備物と注意事項
【準備物】使い捨て手袋、ビニールエプロン、マスク、拭き取り用の使い捨ての布、ペーパータオル、ビニール袋、次亜塩素酸ナトリウム、専用バケツ、その他必要な物品
【注意事項】
窓を開け、十分な換気を行う。汚染場所には処理をする人以外は近づかない。

手順

①使い捨て手袋、マスク、ビニールエプロンを着用する。

②消毒液(0.5%次亜塩素酸)を作る。

③嘔吐物を使い捨ての布やぬらしたペーパータオルで覆い、外側から中央に向けて集めるように折り込みながらぬぐう。

④使用した布とペーパータオルはすぐにビニール袋に入れる。

⑤ぬれたペーパータオルで再度拭き取り、使用後はビニール袋に入れる。

⑥消毒液でゆるく絞った使い捨ての布で床を広めに拭く。2回繰り返し、使用後は布をビニール袋に入れる。

⑦床を拭き終わったら、手袋を新しいものに変える。その際は使用した側が内側になるようにめくるように外す。体や服に触れないように注意しながらすぐにビニール袋に入れる。

⑧ビニール袋は密封し、汚染処理室へ運び感染性廃棄物として処理する。

⑨汚染した着衣は、別のビニール袋に入れて汚染処理室に運び、付着した嘔吐物を取り除き、熱湯消毒(85℃以上の熱湯に10分漬け込む)する。その後、通常の方法で洗濯する。※汚染した着衣は廃棄が望ましい。

⑩処理後は手袋を外し、手洗いと手指消毒を行う。

消毒液の作り方

汚染物・汚染した場所を消毒する時に使用します。市販の漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)を希釈して用います。使用する漂白剤によって次亜塩素酸ナトリウムの濃度が異なるので、事前に確認しましょう。

希釈方法

  • 5%次亜塩素酸ナトリウムを含む原液を用いて、5%の消毒液を作る場合…1ℓの水に対し、100ml加える。
  • 5%次亜塩素酸ナトリウムを含む原液を用いて、1%の消毒液を作る場合…1ℓの水に対し、20ml加える。

参照/高齢者介護施設における感染対策マニュアル(厚生労働省)